-前立腺がんの待機療法(無治療経過観察)-


前立腺がんの待機療法(無治療経過観察)

進行が遅い前立腺がん

前立腺がんの検診では、採血によるPSA(前立腺特異抗原)検査が行われます。正常値は「4」以下ですが、肥大や炎症でも上がります。PSA検査でがんの疑いがあれば、外側から前立腺に刺した針で細胞を取り、顕微鏡で調べる生検を行います。

この検査の普及で、早期の前立腺がんが見つかる人が増え、新たな問題が生まれました。

前立腺がんは進行が遅く、命を脅かす場合でも発見から平均10年かかります。また、ほかの原因で亡くなった人を解剖すると、七十歳以上の20-30%に前立腺がんが見つかりました。がんと言っても、おでき同様に、危険のないものが一定数あります。

ところが治療となると、手術では男性機能の低下が半数に見られ、5-10%の人には尿漏れが残ります。放射線治療でも排尿や排便の障害が起こる場合があります。注射や飲み薬によるホルモン療法は、がんを殺すのではなく抑えるものですが、やはり男性機能は失われたり、顔がほてったりします。

香川大泌尿器科教授の寛善行さんは「病巣が小さく、増殖速度が遅いものはある程度、見分けることができます。しかし100%完全ではないので、慎重な経過観察が必要になります」と説明しています。


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待機療法の基準

待機療法(無治療経過観察)では、2、3か月に一度PSAをはかり、それを基に半年ごとに、増殖のスピードを判断します。寛さんたちは、待機療法が可能な基準を設定しています。

  1. がんの進展度
    PSAは10以下が望ましく、前立腺内にとどまるがんで、直腸から指を入れてもがんに触れない「T1c」という段階。PSA検査でがんが見つかった患者さんの六割は、このタイプです。
  2. 大きさ
    生検では通常、針を6-12か所に刺します。このうちがんが出たのが2本以下が対象になります。 それを超えると、大きいと判断されます。さらにがんが出た組織を顕微鏡で見て、がんが占める占拠率が50%以下なのも条件になります。
  3. 悪性度
    がん細胞の悪性度を示す10段階の「グリーソンスコア」という指標があり、顕微鏡による観察で診断します。数字が高いほど悪性度が高く、6以下が対象になります。

前立腺がんと言われた時に、医師にこの、三つの要件を質問すれば、待機療法が選択可能かどうかわかります。

経過観察中に、増殖が早く、2年以内にPSAが元の数値の2倍になりそうなことが予想される時は、手術や放射線などの治療を始めてください。研究を目的に登録した50人では、3年で35%が経過観察を中止し、治療を受けました。

寛さんは「待機療法には、治療をしないですむか、先延ばしにできる利点があります。しかし、一部の患者さんでは、治療の開始が遅れる場合があることも留意して下さい」と語しています。


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