-竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)-


竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の効能

体力中等度以上で、腹部筋肉に緊張、膀胱や尿道、子宮など泌尿や生殖器の炎症、排尿痛や残尿感、尿が濁り、陰部の腫れや痛み、おりもの、鼠径部(そけいぶ)リンパ節の腫れ、精神的な不安などがあるも人に用います。膀胱炎、尿道炎、子宮内膜症、膣炎、陰部湿疹、睾丸炎、バルトリン腺炎などに応用します。切迫性尿失禁のほかに、尿道炎、膀胱炎、排尿痛、残尿感、頻尿、尿の濁りなど、泌尿器の炎症全般に用いられます。


スポンサードリンク


竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の解説

不眠に効果がある竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

一般的な不眠の原因は、体内時計が夜にならないからです。生理学的にいうと自律神経の交感神経が昼間と同じように緊張してたかぶっていて、夜の神経である副交感神経が抑えつけられているということです。

漢方的には、体の熱は夜になると自然に下がるのが普通なのに、心や肝に熱がたまったままだからなのです。これを「心肝火旺」(しんかんかおう)といい、漢方では体質の一つの診断基準になります。

このため熱がたまった体は、冷まさなくてはなりません。漢方では体の熱を冷ます処方の一つとして、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)があります。竜胆瀉肝湯は読んで字のごとく、主に肝の熱を排出する処方で、この点では西洋医薬の睡眠導入剤と同じ作用を持つといえます。つまり、西洋医学の睡眠薬も体にたまった熱を冷ます薬なのです。

例えば重度の精神疾患を持つ患者は、ほとんど24時間眠ることがありません。体の中に相当な熱を貯めているから眠らないのです。そういう患者さんには、西洋医学でも体を冷やす薬を処方して眠らせるようにします。西洋医学、東洋医学共に眠り薬は体を冷やす薬なのです。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は熱を冷ます

漢方薬は、すぐに効果が現れるものもあれば、じっくり体質を改善して時間をかけて治療するものもあります。そして、体質や症状に当てはまれば、副作用の心配がまずないという点で、西洋医学の薬より安心感が持たれてきました。

ほとんどの漢方処方はそのように考えて頂いてかまわないのですが、例えば肝炎が流行したときに小柴胡湯(しょうさいことう)が特効薬であるといわれ、むやみにそれが用いられて副作用で死者が出たことがあります。小柴胡湯というのは体を乾燥させる処方で、実は使い方がとても難しい薬の一つなのです。

体を冷やす竜胆瀉肝湯も、乾燥させる処方と同じく難しい処方といえるでしょう。この竜胆瀉肝湯は9つの生薬からできています。

地黄(じおう)、当帰(とうき)木通(もくつう)が各5g、黄ごん(おうごん)車前子(しゃぜんし)沢瀉(たくしゃ)が各3g、甘草(かんぞう)、山梔子(さんしし)竜胆(りゅうたん)が各1.5gとなっています。

当帰と甘草以外は寒性の生薬です。一般に「体は冷やすな」「体が冷えると毒だ」などといわれますが、まさにその通りです。つまり連用することによって、思わぬ副作用を引き起こしかねません。眠れないからと、医者の指示もなく何日も飲み続けることは避けてください。

一方、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)とか、風邪の葛根湯(かっこんとう)のように体を温めるタイプの薬は、とりわけ用法が難しくはありません。副作用もほとんど心配することはありません。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)と黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の比較

竜胆瀉肝湯よりは多少有名なものに「黄連解毒湯」(おうれんげどくとう)があります。これも体を冷やす作用のある処方で、同じく眠れないほど熱のたまった体には有効です。黄連解毒湯は二日酔いを防ぐ漢方薬として話題になったこともありますが、酒は肝の熱を高める働きがあります。高まり過ぎると悪酔いや二日酔いになるわけで、肝の熱を取り去る黄連解毒湯はその点で酒の弱い人向けの漢方薬なのです。

そして、黄連解毒湯には黄連(おうれん)という生薬が、竜胆瀉肝湯には竜胆(りゅうたん)という生薬がそれぞれ使われています。

黄連は心と肝に、竜胆は肝に重きを置いて冷やす作用のある生薬で、どちらも大変効果的な薬理作用を持ち、漢方では「清熱燥湿薬」(せいねつそうしつやく)に分類されます。清熱とは、炎症、充血、自律神経の興奮などに伴って生じる熱、のぼせ、ほてり、いらいら、口渇などを改善すること、燥湿とは炎症性の浮腫や水腫、水分の吸収排泄障害などを改善することです。両者を比べますと、黄連のほうが冷やす作用は強いといわれます。

竜胆瀉肝湯と黄連解毒湯は眠れない場合に同じように効果を発揮しますが、一般の方がこれらを使い分けることは困難です。使用にあたっては漢方医に相談してください。そして、前述したようにどちらにしても連用は避けてください。

疲れて眠れない場合の処方

漢方の眠り薬にはもう一つ、酸棗仁湯(さんそうにんとう)があります。こちらは、黄連解毒湯や竜胆瀉肝湯とは全く異なる不眠、すなわち「疲れきって、眠りたいのにどうしても眠れない」場合に使います。この状態は漢方的にいうと、心の血が足りなくて気持ちが落ち着かない状態で、心と肝に熱がたまったのとは正反対の、いわば虚の状態です。ストレス解消の処方といえるかもしれませんが、酸棗仁湯なら連用しても心配はありません。

適応される主な症状

  • 頻尿
  • 膀胱炎、尿道炎
  • 子宮内膜症
  • 尿失禁

配合生薬

配合生薬の効能

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

地黄(じおう)

地黄は漢方治療で、糖尿病に用いられる処方の一つ八味地黄丸(はちみじおうがん)の主構成生薬です。地黄にはその調製法により鮮地黄(せんじおう)、乾地黄(かんじおう)、熟地黄(じゅくじおう)があります。

乾地黄には熱を冷ます作用と血糖降下作用がありますが、虚弱体質の方には不向きです。乾地黄の血糖降下作用はイリドイド配糖体のレーマンノサイド類によるものです、その他、乾地黄エキスには血圧を下げる作用が認められています。

鮮地黄には止血や通経作用があり、熟地黄エキスには血液増加作用や強壮効果があります。

木通(もくつう)

木通の成分は配糖体のアケビン、サポニン、多量のカリ塩などが含まれており、尿の出をよくしてむくみをとります、また血行改善、排膿、通経などに使われてきました。

漢方処方では、冷え症、腰痛、生理不順、子宮内膜炎、膀胱炎などに使用、脚気にも尿を増やす目的で与え、妊婦の浮腫にも用います。

黄ごん(おうごん)

漢方の中でも最もよく利用されるものの一つで、主に炎症や胃部のつかえ、下痢、嘔吐などを目的に使用されています。

黄ごんエキスは、炎症に関与する諸酵素に対して阻害作用を示しています。これらの作用は、この生薬中に豊富に含まれるフボノイドによるもので、特に有効成分バイカリンやバイカレイン、およびその配糖体はプロスタグランジンらの生合成やロイコトリエン類などの炎症物質の産生を阻害します。

その他、抗アレルギー(ケミカルメジエーターの遊離抑制)、活性酸素除去、過酸化脂質形成抑制、トランスアミナーゼの上昇抑制による肝障害予防、および胆汁排泄促進による利胆作用などが確認されています。

また、ヒト肝ガン由来培養肝がん細胞の増殖を抑制する他、メラノーマの培養細胞の増殖を抑制することより抗腫瘍効果が期待されています。漢方で多くの処方に配合されていますが、単独で用いられることはありません。

沢瀉(たくしゃ)

沢瀉には尿毒症の改善、肝脂肪の蓄積抑制、利尿作用などが認められています。

これらにはトリテルペンのアリソールB、およびそれらのモノアセタートが関与しています。また、これらは血中のコレステロール低下作用を示すことが動物実験で確認されています。また免疫活性作用は含有多糖類による効果です。

漢方では利尿薬や尿路疾患用薬、鎮暈薬(ちんうんやく:乗物酔い防止薬)などに処方されます。

車前子(しゃぜんし)車前草(しゃぜんそう)

車前子はオオバコの種子、車前草はオオバコの全草を指します。車前子、車前草には消炎、利尿、整腸作用の他、鎮咳効果もあります。慢性気管支炎の咳に、車前草の煎液がきわめて有効であることは、臨床的に証明されています。

利尿効果は、この植物に特異な成分として含まれる、イリドイド配糖体のアウクビンが有効成分と思われる。その他、車前子に含まれる粘液性配糖体、プランタゴ-ムチラゲAに免疫活性作用、および血糖降下作用があることが証明されています。

民間的に、ゲンノショウコと同じように車前草を毎日お茶のように飲むと胃腸によいといわれている他、眼病に洗眼料として利用されています。ある地方では、種皮に緩下作用があるとして便秘に利用されていますが、これは粘液質によるものと思われます。

竜胆(りゅうたん)

竜胆は苦味健胃薬として、古くから知られていみ生薬の中でも最も苦いものの一つです。漢方処方では健胃や消炎を目標に配合されています。

苦味成分であるゲンチオピクロシドなどのセコイリドイド配糖体が胃粘膜を刺激して、胃液の分泌を促進するとともに、胃腸の嬬動を促して、消化を活性化させます。その他、膵液(すいえき)や胆汁の分泌も促進させます。

山梔子(さんしし)

山梔子は消炎、利胆、止血作用があります。漢方では黄疸、肝炎、血便、血尿、吐血、不眠の治療に用いられます。有効成分はゲニポシド、ゲニピン、クロシン、クロセチンなどです。

クロシンやクロセチンには、胆汁分泌促進作用があります。また、この生薬に脂質代謝改善効果がみられるのは、ゲニピンのLDLコレステロール低下作用と、クロセチンの血中コレステロール低下作用によるものです。

胃腸薬に適用されるのはゲニピンの胃酸分泌抑制作用、鎮痛作用および瀉下作用(便通を良くし便秘を解消する作用)によります。ゲニポサイドおよびゲニピンには、記憶障害の予防効果が期待されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。


スポンサードリンク


漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


スポンサードリンク


の治療ガイド

スポンサードリンク



頻尿/健康

↑ ページトップ